”さよなら”なんて言えなくて
青空。
ジリジリと肌を刺激する太陽。
帽子を深くかぶりタオルを肩からかけ少しでも日差しから逃れようと
ベンチに腰掛サッカーを見つめる蒼。
「主人がおらひんのにご苦労やな。」
ペットボトルの水を飲みながら蒼の横に座る。
「信五が行けって。練習を僕の変わりに見てこいってさ。」
ふてくされた顔ですばるを見る。
「信五らしいな。それ。」
苦笑するすばる。
「やろう。こんな時まで頭の中サッカーやねん。」
目を伏せ作り笑いをこぼす。
「どうしたん?蒼らしくないで。」
一瞬の変化も見逃さず答える。
「そんなことない。」
すばるの視線から逃げるようにうつむく蒼。
「蒼。」
ベンチから立ち上がると蒼の目の前へと腰をおろす。
「お前、嘘つくの下手やねん。」
うつむいている蒼の顔を強引にあげる。
「久しぶりやな?すばるがうちのこと名前で呼ぶの。」
変わらず作り笑いで答えると
一粒の涙が蒼の頬をつたう。
「無理に笑うなや。」
指で蒼の涙を拭うすばる。
「…可笑しいな…何で涙が…。」
震える声。
次から次へと涙が溢れ出す。