”さよなら”なんて言えなくて
腕で流れ落ちる涙を拭う蒼。
その様子にかける言葉も見つからず黙って蒼を見つめる。
沈黙の中、練習生の声と笛の音だけが存在する。
「…ご…めん。練習戻りぃや。」
顔をあげすばるを見る。
「戻れるか。お前に泣かれたら調子狂うやろう。」
乱暴な口調の中、優しさが残る言葉。
「ごめん。」
今度ははっきりとした声で謝る蒼。
「何があってん?その様子やと信五と喧嘩した訳やなさそうやし。」
蒼の横に改めて腰をおろすすばる。