タイトル未公開
初恋の人
「じゃあな」
「…うん」
拓真(タクマ)はあたしに背中を向けると、それだけ言って部屋から出て行った。
日曜日の…まだ夜も明ける前の薄暗い空の下、拓真は帰って行った。
数時間前まで、抱き合ってお互いの愛を確かめ合ったシングルベッドも…、1人で寝転ぶとどこか広く感じる。
あたしは、まだほのかに拓真の温もりが残る布団の中へ潜り込み、甘い夢の続きに浸る。
あたし、福井萌(フクイモエ)。
18歳。
清風(セイフウ)大学に通う、大学1年生。
春から学校近くのアパートで一人暮らしを始めた、ごくごく普通の大学生。
…だった。
…彼。
そう…、拓真と再会するまでは。
三浦(ミウラ)拓真、27歳。
大手保険会社に勤める、営業マン。
拓真は、あたしが小学6年生のときの家庭教師だ。