マザーリーフ
うっかりしていたが、ついに恐れていた事が起きた。
1人1曲披露することになっていた。
桃子は頭がパニックになった。
桃子はあまり歌が得意ではなかった。
なるべくカラオケは避けてきたが、場の雰囲気を壊さない程度に付き合わなければならない。
「えっと…モーニング娘のモーニング・コーヒー…」
カラオケなど何年もやってないから、リモコンの入力方法もわからなかった。
桃子はこれまでのカラオケ人生をこの曲で乗り切ってきた。
かなり古いが仕方ない。
皆、流行りの歌ばかり歌うので恥ずかしいが、これなら歌詞もちゃんと覚えている。
入力は人にやってもらい、ついに歌う番が回ってきた。
ステージで歌いながら、潤を探した。
ほんの3分くらいなのに、大汗が出た。
全然声も出なくて音程もうまく取れず、無様だったが仕方ない。
でも、それなりにウケた気がして、恥はかき捨てることにした。
曲の間、潤は桃子のほうを一切見ずに、誰かとずっと喋っていた。
(何よ、全然私に興味なんてないじゃない…)
「良かった!見てなくて。」
席に戻った桃子は開き直って、独り言を言った。
ふと、時刻をみようと携帯を取り出すと、留守電が入っていた。
隆からだった。
カラオケルームを出た。
店の前の通路で留守電の録音を聞いた。
『もしもし、隆だけど。保険証どこにある?歯が痛くて、歯医者行きたいんだよね。明日取りに来るから郵便受にいれておいて。』
何が保険証だ。
桃子はすぐに留守録を消した。
隆は30歳。潤は29歳。
1つしか違わないのに、この差はなんだと思う。
隆とは桃子がデパート勤めの時に偶然隣り合った居酒屋の席で知り合い、交際を始めた。
隆も桃子も結婚願望が強い頃で、八ヶ月ほどで結納を交わし、結婚した。
しかし、結婚一年目の時、突然、隆は入社5年目だった会社を辞め、無職になった。
ちょうど桃子の妊娠がわかった時だった。
隆が無職の間、桃子の父が援助してくれた。
半年間の就職活動期間を経て、やっと今の会社に採用された。
こんなに妻や義父に迷惑かけて、終いには離婚したいと言う。
そんなのが通用するわけがない。
「楽しんでる?」
気がつくと、潤が側に立っていた。
「まあね。」
桃子は携帯を鞄にしまいながら言った。
「でも、もう帰ろうと思って。今、うち、いろいろ揉めちゃってちょっと大変なんだよね。」
「ほんと?」
潤が眉をひそめた。
「じゃあ、幹事さんによろしく言ってね。カラオケのお金は前払いだから、いいんだよね。」
「待てよ。」
立ち去ろうとする桃子を潤は引き止めた。
「アドレス教えてくれないか?俺に出来ることがあれば、力になるよ。」
潤は真剣な眼差しで言った。
1人1曲披露することになっていた。
桃子は頭がパニックになった。
桃子はあまり歌が得意ではなかった。
なるべくカラオケは避けてきたが、場の雰囲気を壊さない程度に付き合わなければならない。
「えっと…モーニング娘のモーニング・コーヒー…」
カラオケなど何年もやってないから、リモコンの入力方法もわからなかった。
桃子はこれまでのカラオケ人生をこの曲で乗り切ってきた。
かなり古いが仕方ない。
皆、流行りの歌ばかり歌うので恥ずかしいが、これなら歌詞もちゃんと覚えている。
入力は人にやってもらい、ついに歌う番が回ってきた。
ステージで歌いながら、潤を探した。
ほんの3分くらいなのに、大汗が出た。
全然声も出なくて音程もうまく取れず、無様だったが仕方ない。
でも、それなりにウケた気がして、恥はかき捨てることにした。
曲の間、潤は桃子のほうを一切見ずに、誰かとずっと喋っていた。
(何よ、全然私に興味なんてないじゃない…)
「良かった!見てなくて。」
席に戻った桃子は開き直って、独り言を言った。
ふと、時刻をみようと携帯を取り出すと、留守電が入っていた。
隆からだった。
カラオケルームを出た。
店の前の通路で留守電の録音を聞いた。
『もしもし、隆だけど。保険証どこにある?歯が痛くて、歯医者行きたいんだよね。明日取りに来るから郵便受にいれておいて。』
何が保険証だ。
桃子はすぐに留守録を消した。
隆は30歳。潤は29歳。
1つしか違わないのに、この差はなんだと思う。
隆とは桃子がデパート勤めの時に偶然隣り合った居酒屋の席で知り合い、交際を始めた。
隆も桃子も結婚願望が強い頃で、八ヶ月ほどで結納を交わし、結婚した。
しかし、結婚一年目の時、突然、隆は入社5年目だった会社を辞め、無職になった。
ちょうど桃子の妊娠がわかった時だった。
隆が無職の間、桃子の父が援助してくれた。
半年間の就職活動期間を経て、やっと今の会社に採用された。
こんなに妻や義父に迷惑かけて、終いには離婚したいと言う。
そんなのが通用するわけがない。
「楽しんでる?」
気がつくと、潤が側に立っていた。
「まあね。」
桃子は携帯を鞄にしまいながら言った。
「でも、もう帰ろうと思って。今、うち、いろいろ揉めちゃってちょっと大変なんだよね。」
「ほんと?」
潤が眉をひそめた。
「じゃあ、幹事さんによろしく言ってね。カラオケのお金は前払いだから、いいんだよね。」
「待てよ。」
立ち去ろうとする桃子を潤は引き止めた。
「アドレス教えてくれないか?俺に出来ることがあれば、力になるよ。」
潤は真剣な眼差しで言った。