マザーリーフ
同窓会
明け方、車のエンジンの音で目が覚めた。
車をポーチに停めている音がする。
隆が戻ってきたのだろう。
布団の中で桃子はまた目を瞑る。
どうでもいい。
隆と別れたら、家のローンどうしよう…
あと返済は28年ある。
あいつが払って、自分と愛菜が住み続けることなどできるのかな。
やっぱり実家に戻ろうか。
働かなきゃならないし…
そんな事を考えながら、隣ですやすや寝ている愛菜の横顔を見る。
一番可哀想なのは、愛菜だ。
愛菜にとって何が一番いいのか考えなきゃ。
その時、メールの着信音がした。
手元にあった携帯をみると、隆からだった。
[しばらく戻らない。距離をおいて、それからどうするか話し合おう。]
あの女のところへ行くつもりなのだろう。
「本当、馬鹿…」
桃子は呟き、そのメールを迷惑メールがきた時のようにすぐに消した。
愛菜を伴い、午前9時頃になってやっと下に降りた。
誰もいない。
車がポーチに停めてあり、いつも空いている食卓の椅子に置く、隆の仕事用の鞄がなくなっていた。
朝、戻ってきたのは、鞄を取りにきたのだろう。
今日、何日だっけ…。
桃子は溜息をついて、カレンダーを見た。
その途端、ハッとなる。
今日は、同窓会の日ではないか。
同窓会の開かれるホテルは、駅からすぐの場所にあった。
汗だくの桃子がホテルの会場の受付に行くと、誰もいなかった。
30分も遅刻してしまった。
愛菜は実家に預けたのだが、出掛けに愛菜が自分も行くとごねて、母と共に愛菜をなだめていたから、遅くなってしまった。
何も知らずに孫娘を抱く母を見て桃子は悲しくなった。
母は娘夫婦が離婚するとなったら、どんなにショックだろうか。
4年前、家を買うに当たっては、桃子の実家に頭金を出してもらった。
結婚のお祝いだと言って大金を工面してくれた父は激怒するに違いない。
泣きたくなるのを桃子は堪えた。
受付のテーブルに「永瀬桃子」と書いた名札が置いてあった。
桃子は久しぶりに見る旧姓の名札を胸に付けると、
「一の森中学 第15期生同窓会」
と書かれた案内板が置いてある会場の扉を開けた。
会場は照明が落とされ、大勢の人がいた。
スポットライトに照らされた正面の緞帳の前に何人か人が立っていた。
ちょうど、恩師たちの紹介をしているらしかった。
桃子は、中学時代の友達とは、卒業以来、誰とも連絡をとっていなかった。
千香のことを思い出したくなかったからだ。
会場に来れば誰かに会える。
そう思い、同窓会に来た。
会場には白いクロスを掛けた大きな円卓がいくつかあり、立食形式だった。
手前のテーブルには「3年1組」と書かれた札がおいてあり、クラスごとに分けられているらしかった。
桃子は自分のテーブルを探そうと、会場の中に進んだ。
女子は着飾っている者が多かった。
クリーム色のサテンのドレス。
薄いピンクのシフォンのワンピース。
黒いラメ入りのシックなドレス。
皆まだ、30歳そこそこなのだ。
この場にくるのは独身者のほうが多いかもしれない。
桃子は愛菜のお宮参りの時に着た紺のニットのアンサンブルを着ていた。
自分の地味さが嫌になった。
パールのネックレスだけが救いだ。
桃子が自分の組のテーブルに付くとかつての同級生たちがいた。
車をポーチに停めている音がする。
隆が戻ってきたのだろう。
布団の中で桃子はまた目を瞑る。
どうでもいい。
隆と別れたら、家のローンどうしよう…
あと返済は28年ある。
あいつが払って、自分と愛菜が住み続けることなどできるのかな。
やっぱり実家に戻ろうか。
働かなきゃならないし…
そんな事を考えながら、隣ですやすや寝ている愛菜の横顔を見る。
一番可哀想なのは、愛菜だ。
愛菜にとって何が一番いいのか考えなきゃ。
その時、メールの着信音がした。
手元にあった携帯をみると、隆からだった。
[しばらく戻らない。距離をおいて、それからどうするか話し合おう。]
あの女のところへ行くつもりなのだろう。
「本当、馬鹿…」
桃子は呟き、そのメールを迷惑メールがきた時のようにすぐに消した。
愛菜を伴い、午前9時頃になってやっと下に降りた。
誰もいない。
車がポーチに停めてあり、いつも空いている食卓の椅子に置く、隆の仕事用の鞄がなくなっていた。
朝、戻ってきたのは、鞄を取りにきたのだろう。
今日、何日だっけ…。
桃子は溜息をついて、カレンダーを見た。
その途端、ハッとなる。
今日は、同窓会の日ではないか。
同窓会の開かれるホテルは、駅からすぐの場所にあった。
汗だくの桃子がホテルの会場の受付に行くと、誰もいなかった。
30分も遅刻してしまった。
愛菜は実家に預けたのだが、出掛けに愛菜が自分も行くとごねて、母と共に愛菜をなだめていたから、遅くなってしまった。
何も知らずに孫娘を抱く母を見て桃子は悲しくなった。
母は娘夫婦が離婚するとなったら、どんなにショックだろうか。
4年前、家を買うに当たっては、桃子の実家に頭金を出してもらった。
結婚のお祝いだと言って大金を工面してくれた父は激怒するに違いない。
泣きたくなるのを桃子は堪えた。
受付のテーブルに「永瀬桃子」と書いた名札が置いてあった。
桃子は久しぶりに見る旧姓の名札を胸に付けると、
「一の森中学 第15期生同窓会」
と書かれた案内板が置いてある会場の扉を開けた。
会場は照明が落とされ、大勢の人がいた。
スポットライトに照らされた正面の緞帳の前に何人か人が立っていた。
ちょうど、恩師たちの紹介をしているらしかった。
桃子は、中学時代の友達とは、卒業以来、誰とも連絡をとっていなかった。
千香のことを思い出したくなかったからだ。
会場に来れば誰かに会える。
そう思い、同窓会に来た。
会場には白いクロスを掛けた大きな円卓がいくつかあり、立食形式だった。
手前のテーブルには「3年1組」と書かれた札がおいてあり、クラスごとに分けられているらしかった。
桃子は自分のテーブルを探そうと、会場の中に進んだ。
女子は着飾っている者が多かった。
クリーム色のサテンのドレス。
薄いピンクのシフォンのワンピース。
黒いラメ入りのシックなドレス。
皆まだ、30歳そこそこなのだ。
この場にくるのは独身者のほうが多いかもしれない。
桃子は愛菜のお宮参りの時に着た紺のニットのアンサンブルを着ていた。
自分の地味さが嫌になった。
パールのネックレスだけが救いだ。
桃子が自分の組のテーブルに付くとかつての同級生たちがいた。