WALL
「ねえ、佐藤さん!」



教室を出た処で稀咲は、そう言って呼び止めたのは……



巡と同じ中学だと言っていた女子の一人、佐藤である。




「音芽さん……なぁに?」



佐藤が振り向くと、稀咲は彼女の手を引いて廊下の隅に移動する。




「あの娘……來中さんだっけ? 佐藤さん、知り合いなのよね?」




「中学の時は結構、目立つ娘だったって印象はあるけど……知り合いって程じゃあないわ。どうかしたの?」




「いいえ、たいした事じゃないの。もしかして……神海くんも、同じ中学だったんじゃないかしら?」




そう問われて、佐藤は少し考えてから、ハッと何かを思い出した顔をする。




「そう! 神海くん同じクラスだった……。神海くんは、その時からあまり目立つ方じゃなかったから……」




「で? 二人は親しかったの?」




「二人って言うか……三人だね」




「三人……?」




「巡さんと神海くん……そして、もう一人の男の子。その三人で仲良くしてたと思うけど」




「そのもう一人って? この高校にいる?」



稀咲のその質問に、佐藤は声のトーンを下げる。



「ううん……いない」




「じゃあ、別の高校なのね?」




「そうじゃなくて……」




「?」



佐藤の雰囲気に、稀咲は不思議な顔で、その言葉を待つと……



佐藤は、言いよどみながら、意外な事実を打ち明けた。




「その彼は……死んだの」



「!」
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