WALL
隣の女……美都丘 霞
「神海くん……コレ」
教室に戻った和哉に美都丘 霞(ミツオカ カスミ)は、そっとノートを差し出した。
隣の席の女……和哉は彼女のことを、そうとだけ認識している。
「何……?」
和哉は、ボンヤリとノートを見つめながら聞く。
「あのっ……世界史のノート……よかったら使って……神海くん、さっきの授業寝てたから」
霞は自分がノートを渡す理由を、たどたどしく説明した。うつむき加減の顔をサラサラとした前髪が隠すが、その頬は幾分紅くなっていた。
「俺、頼んでないけど……」
和哉は、無愛想にそう言うと、視線を窓の外へ向けた。
「で、でも……今日のところテストに出るって先生が言ってたから」
霞は更にノートを差し出すが、和哉は見向きもしない。
霞は数秒の沈黙に耐えた後……
「……じゃあ置いておくから気が向いたら使って、次の授業までに返してくれればいいから……」
そう言って、和哉の机にノートを置くと自分の席に座った。
鐘がなり教師が教室に入って来た。
「よーし、授業始めるぞ」
それまで騒がしかった教室は静まり授業が開始される。
「…………」
和哉は自分の机の上の霞のノートを、しばらく無表情に見つめてから……
(構わないでくれればいいのにさ……)
そんな風に思いながら、それを鞄にしまった。
「!」
その葉子を見た霞……うつむきながら、少し嬉しそうな顔をする。
教室に戻った和哉に美都丘 霞(ミツオカ カスミ)は、そっとノートを差し出した。
隣の席の女……和哉は彼女のことを、そうとだけ認識している。
「何……?」
和哉は、ボンヤリとノートを見つめながら聞く。
「あのっ……世界史のノート……よかったら使って……神海くん、さっきの授業寝てたから」
霞は自分がノートを渡す理由を、たどたどしく説明した。うつむき加減の顔をサラサラとした前髪が隠すが、その頬は幾分紅くなっていた。
「俺、頼んでないけど……」
和哉は、無愛想にそう言うと、視線を窓の外へ向けた。
「で、でも……今日のところテストに出るって先生が言ってたから」
霞は更にノートを差し出すが、和哉は見向きもしない。
霞は数秒の沈黙に耐えた後……
「……じゃあ置いておくから気が向いたら使って、次の授業までに返してくれればいいから……」
そう言って、和哉の机にノートを置くと自分の席に座った。
鐘がなり教師が教室に入って来た。
「よーし、授業始めるぞ」
それまで騒がしかった教室は静まり授業が開始される。
「…………」
和哉は自分の机の上の霞のノートを、しばらく無表情に見つめてから……
(構わないでくれればいいのにさ……)
そんな風に思いながら、それを鞄にしまった。
「!」
その葉子を見た霞……うつむきながら、少し嬉しそうな顔をする。