銀杏の下で







「―…いつも、ここにいるんですね。」


不思議な男の子に声を掛けられたのは、金木犀の香りが鼻をくすぐり始めた、10月も半ばのことだった。



「……ここが、好きなの。」


いつもなら、変なナンパは無視か逃げるかするけれど、それをしなかったのは―…



「僕も、ここが好きです。―…あなたを見付けてからは、特に。」




目の前に立つ男の子が、

明らかに
院内着を着ていたから。




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