銀杏の下で







「いつも、ここで本を読んでらっしゃるでしょう? 毎日見かけるので、気になってたんです。」



入院患者、なのだろう。

あたしよりも、
ひとつかふたつ、年下だろうか。

言葉を交わしながら、やわらかな茶色のくせ毛に目を奪われた。

艶やかな瞳に鼻筋の通った、美しい少年。


まるで…………




………



ああ、どうしてだろう。


似ている誰かを、思い出す。


いつも耳の横で
収まり悪そうにしていた
茶色のウェーブヘア。

夢を語る時
眩しい程キラキラ輝く

少年のような、瞳。



そう、この

少年…のような……




「……今日は『智恵子抄』ですか。本の趣味が合いそうだな、って。すみません、実は毎日チェックしてました。」



少し恥ずかしそうに
目線を横に反らすさま。

それなのに
隠しきれない好奇心が
ありありと浮かぶ表情(かお)。




どうして

どれも



、、、
あなたを思い出させるのか。







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