空からのメッセージ〜最愛のキミへ〜

「雨宮くんはどうして、私を好きになってくれたの? 初対面なのに…」

「俺、先輩の絵のおかげでここまで来れたんです」

「絵…?」

「【空と海】っていう先輩の絵に引かれたんです」

あ…懐かしい。

【空と海】

私が高校生になって初めて描いた絵だ…


「俺、陸上部なんですけど。丁度、その絵を見つけた頃スランプで…なかなかタイムが縮まらなくて。

そんな時、先輩の絵を見つけたんです。

――空と海って、どこまでも広がっていてゴールは見えないですよね。

だけど、どこを見ても同じ空と海なんです。

なんか、不思議ですよね。どこまでも無限に広がっていて…

だから、先輩の絵の【空と海】のように、自分の中にある無限の可能性を信じてみようって思ったんです。
今の俺があるのは先輩のおかげなんです」


「そんな…あの絵、初めて描いたからすごく下手だったのに。
それに、あの絵の横にはコンクールで優勝した先輩の作品が飾ってあったんだよ?」

「そうだったんですか?…先輩の絵しか見えてなくて、覚えてないです。

それに…例え、どんな有名な画家が描いた絵でも、綺麗な絵が飾ってあったとしても、先輩の絵の方が輝いています」

「――――っ!!」

そんなこと…初めて言われた。

自分の思い描いた世界を形にしたくて、だから美術部に入部したんだ。

絵を描くのは楽しい。

なんか、心が洗われるようで…すごくスッキリした気分になれるから。


でも、もう……。

この事は考えないって決めたのに。



だけど、自分の作品を褒めて貰って嬉しくない人なんてきっといないよね。


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