気合いの華
「カズキくん飲んで来たみたいだから、大丈夫だって?」

「へ?そうね…」

「すみません、少しお邪魔したら出ますので。」

「へ?ゆっくりしていきなよ?ねぇ?」

そう言われて、お母さんは咄嗟に、えぇ。と呟いてから、中川さんが俺の方を見て、

「じゃ、部屋行こう?」

「へ?入って良いの?」

「良いに決まってるじゃん?」

そう言って中川さんは階段を登りはじめていた。

もう少しお母さんと話ししても良くない?初めてあがるんだし…

「あの…」

ずっと、顔は笑顔なのだが、変なヤツが来たよ…みたいな眼で見ているお母さんに、何て話しかけて良いかわからなかった。

「カズキくん、もしかして付き合ってるの?」

「へ!?」

俺は驚いて首を横に大きく振った。

「俺なんかがそんな…」

そう言いながら、きっと俺は顔が赤くなっていた事だろう。
焦っていた俺を見て、お母さんはクスッと笑った。

その時笑ったお母さんの顔が、一瞬中川さんとそっくりで眼を背けてしまった。

「話してみると、本当に優しそうな人なのね♪」

「へ?」

「もうカズキくん!早くおいでよ?」

その時、2階から中川さんの声が聞こえてハッとした。

「行っていいわよ?ちょうど和美の好きなクッキー焼いてるから、後で持って行くわね♪」

そう言いながらお母さんは嬉しそうにドアの奥のおそらくリビングの方へと戻っていった。
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