夜明け前
ただ今時刻は12時28分。
私、本城珠花は、…いや、藤乃宮学園中等部1年Sクラスの全員が、時計の長針が30分を指すのを今か今かと待っております。
「えーと、今読んだ所結構大切だから覚えといて、」
キーンコーンカーンコーン
「……ねー」
キーンコーンカーンコーン
「…はーいお昼ご飯の時間でーす。ではまた〜」
「「「「「「はーい!!」」」」」」
そう言って出て行った先生の背中に、皆で返事をしながら、あの先生いつも途中で終わるよなぁ。なんて思いながら、かばんからお弁当箱を取り出す。
「…珠花、ランチ行きましょう?」
「鈴。今日も温室?」
「えぇ、いいかしら」
「うんっ。温室好き」
今私をランチに誘いに来てくれたのが、天沢鈴。
転入して初めてのランチタイム。
やっぱり心細くて、怖くて。
素敵なクラスメイトばかりだから、私が勇気を出せばいいってわかってる。
だけど、ランチバックの持ち手をキュッと握るばかりで、なかなか行動できなかった。
そんな私に声をかけてくれたのが、鈴だった。
『素敵な温室があるの。紹介したいから、ランチ一緒しない?』