夜明け前
「…そんな時に、清風が妊娠したの。元気になったって言っても、若すぎる上に普通の体じゃないから皆が止めたし、父親は誰なんだって問い詰めた。…だけど、絶対に産む。私一人で育てる。そう言って譲らなかった」
たった15歳の少女の決断。
母様はそんな中で、私達を産んでくれたんだね。
「…清風にとって、出産は命を削ることだった。…私も反対したわ」
「―先生も?」
「そう。…ごめんね」
ううん、謝る必要なんてない。
反対する気持ちはわかるから。
たとえ小さくても命は大切で、かけがえのないもの。だけど母様を大切に思う人達からすれば、母様を守ることを優先するだろう。
「だけど清風は、この子達を守れるのも幸せにできるのも私だけだって、絶対に産むんだって…家を出たの」
「じゃあ…母様の家族も、父様も、俺達が産まれたことは知ってるんですか?」
「清風の家族は知ってると思うわ。あなた達のお父様は…知らないかもしれない」
父様は、私達を知らない…。