夜明け前
「じゃあ…今母様が入院していることは、知らされてるんですか?」
「…そのことなんだけどね、清風のご家族には私が連絡したの。…勝手にごめんなさい」
「いえ、俺も出来るならお願いしたいと思ってました。…知らされないまま、なんて悲しすぎるから。ね、しゅー?」
「うん。先生、母様の家族は病院には?」
「…わからないの。直接話せたわけじゃないから…」
「そうですか…」
母様、今までたくさん頑張ったあなたに、私達が出来ることはありますか?
自分を犠牲にして私達を守ってくれたあなたに、最期まで笑っていてほしい。
「…さく?」
「ん?どうした?」
「…笑って、いようね。泣かないで、いようね」
「…うん、…約束」
「ん」
震える手で、小指を結んで。
笑っていよう。
大好きな、母様のために。