夜明け前
―コンコン、
「美咲先生、」
「はい、どうぞ」
ノックをして入って来たのは、母の担当をしてくれている、看護士さん。
「美咲先生、朔乃くん、珠花ちゃん」
「佐倉さん、なにかあった?」
「あ、いえ、状態は安定してます。…それで、本城さんが皆さんを呼んで来て欲しいとおっしゃってて」
「わかりました。…二人とも、大丈夫?」
「はい、しゅーは?いける?」
「ん、大丈夫。母様に会いたい」
本当はすごく怖い。
母の病室へ向かう廊下を歩きながら、少し前を歩くさくを見れば、少しだけ震えていた。
あぁ、さくも怖いんだって、だからぎゅっとさくの手を握ったら、さくもぎゅっと握り返して来て。
「…怖い、ね」
そう辛そうに笑いかけて来るから、
「うん、怖い…」
気持ちが深く沈みそうになって、こんな状態で様母に会ってしまっていいのだろうか。
そう思っていた時。