夜明け前


「…ね、顔、見せ、て?」


「…うん、母様」


「…ふふ、母様」


さくと二人、精一杯の笑顔を浮かべて。


「…そーちゃ、しょ、こちゃん」


「姉さん、」


「清風、」


「…あり、がと。さくの、としゅか、よろしく、おねが、い、」


「姉さん、…も、いいから」


「っ、任せといて、安心、していいから」


ふ、と優しく微笑む母様。


「さくちゃ、しゅーちゃ、ん」


「「はい、母様」」


「ね、せかい、で、いちばん、あ、いして、る」


「俺も「私も愛してる」」


本当に本当に愛してる。


母様が瞳を閉じる瞬間、二人で母様の頬にキスを落とした。


その瞳からこぼれ落ちた涙は、私達が初めて見た、最初で最後の母様の涙。


それを見た瞬間、私もさくも、大きな声で泣いた。


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