夜明け前
母様が亡くなった。
29歳だった。
16歳で私達を産んでから、息つく間もなく駆け抜けた人生だったと思う。
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気づけば目まぐるしく時間は進んでいて、必要なことは全て奏音さんと翔子先生が引き受けてくれた。
子供な私達はなにをすればいいのか分からず、ただただなされることを傍観するだけ。
けれど忙しいのは同じで、母様が亡くなったことを本当に実感することはできずにいた。
――そして、母様の両親に対する不信感も募っていた。
言うことを聞かずに出て行ったとしても、16年間会っていなかったとしても、親子に変わりはないはずだ。
けれど、大事な瞬間にも、場所にも全て現れなかった。
そんなに憎いのかと、悲しくなった。
奏音さんに聞こうかとも考えたけれど、奏音さんが困るだけだ。
私達を認められないなら、それでもいい。
けれど、大切な娘を亡くしても平気でいられるのかと、何も行動を起こさずにいられるのが、不思議だった。