夜明け前
重い空気が、病室に立ち込める。
「…それから、本当は、おじい様もおばあ様も、ずっと傍にいたんだ」
「「―傍に?」」
困惑した二人の表情に、これ以上話してしまうのはやめた方がよいのだろうかと、悩んでしまう。
「…あぁ、…二人に、朔乃と珠花に合わせる顔が無いって、ずっと影から見守ってた」
立ち入る資格はないと、遠くから離れてずっと見つめていた。
「…後悔しても遅いのは分かってる、だけど、後悔するしかない、そう言っていつも泣くんだ」
「…おじい様と、おばあ様が?」
「そう。…俺も同じだよ。…おじい様もおばあ様も、二人に会いたがってる。だけど二人が会ってもいいって思うまでは、無理に会わないって言ってる」
「…会いたい、か」
朔乃が淋しそうに、けれど慈しむように笑った。
「…おじい様とおばあ様の方が、私達に会いたくないんだって、思ってた…」
「うん、俺も」
嬉しそうに、切なそうに、
「…会っても、いいの?」
珠花が、涙で少し赤くなった瞳に、強い輝きを宿して言った。