夜明け前


「本城様、お帰りなさいませ」


ロビーに入ってすぐに、穏やかで気品の漂うおじ様がやって来た。


…こうゆう人をダンディーって言うのね。


「松谷さん、ただいま。この二人、この間話してた…」


奏音さんが話しをしている間も、周りが気になって仕方ない。


だってすごいんだもん。


天井が高くて明るくて、全体的にすごく広いし、温度管理も絶妙。


しかも、ロビーの中にお庭があるなんて。小さな噴水まである。すごいすごい。


興味津々で周りを見渡していた。


「瞳がキラキラと輝いていらっしゃいますね」


優しい声でそう話しかけられて、ハッと我に帰る。


「あ、はい。すごく素敵だなって。…あの、はじめまして」


「気に入っていただけましたようで、安心いたしました。はじめまして、私松谷と申します。なんなりと、お申しつけください」


「あ、本城珠花です。よろしくお願いします」


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