わたるんといっしょ
「渉くんの友達は、一人減っちゃうけど――渉くんなら、これから絶対にお友達ができるからっ」
一人ぐらい、いなくなったって平気だよ――そこまで言えなかったのは、渉が好美の手を掴んだからだった。
ぎゅっと、胡弓よりも強い力で握りしめて。
「僕、友達がいないんですよ」
まったくもって情けないと、渉は薄く笑う。
「友達みたいな家族はいますが、同年代の友達はいません。優しくしてくれる同級生はいても、好美さんのように二人っきりで出かけるような仲の友達は、いません」
これから先、好美の言う通りに、友達と呼べる人たちができたとしても。
「好美さんがいなくなったら、悲しいから」
同年代の友人。
かけがえのない大切な友達だと、渉は好美の手を離さなかった。