わたるんといっしょ


「許すと思いますカー?いやいや、単なる悪あがきカァ」


もう片方は、それを良しとしなかった。


好美の腕を引きちぎらんばかりに、後ろに引いた胡弓。地面に投げ出された好美に、渉が近寄るのは誰もが予想でき。


「あんま、ナマ言ってると、ちょきんとしちゃうよー」


そうして胡弓が渉の行く手に遮るのでさえも予想できた。


「渉くん!」


投げ出された好美が、真っ先に心配した少年は――首もとに刃が添えられていた。


「可愛い顔しちゃって、やることは大胆なのねぇ。アテクシの好みだわ、ほんとー。カカカ、今日はいい夜だわぁ。アテクシの大好物が揃いまくってー!」


天を仰いで恍惚とする胡弓、渉の首を挟まんとする刃の切っ先は冷たいものだった。


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