わたるんといっしょ


「あぎっ、がががががっ!」


ハイハイが崩れて、腹這いをする胡弓。


「ごめっ、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいいぃ!」


圧倒的な力を前にしての敗残者は、ただひたすらに謝るしかなかった。


殺さないでと。
――いや。


「こわれっ、壊れるから、かき回さないでよぅっ!」


壊さないでと、胡弓は頭を掻いた。


「渉くん……」


胡弓の崩壊ぶりに恐々しつつ、渉の傍に寄り添う好美に対して、渉は複雑な顔をしていた。


「やめてください」


それは誰に向けたものだったか。


「これ以上、僕を泣かせないでくださいよ」


懇願する声。
言い終わるや否や、頭をかきむしった胡弓が、はっと我に返ったかのように立ち上がった。


< 136 / 454 >

この作品をシェア

pagetop