わたるんといっしょ


「1カメさあああぁんっ!」


わたるんの手で潰れた蚊に対して、分福が絶叫をあげた。


「えぇ……」


「あ、ああっ、なんて非道なっ。い、いちちちち、いちカメさんを、潰すだなんてっ。カエルの子はカエル……、くぅ、さすがはあの極悪非道トーマさんの家族だけありますねっ!

スキュープっ、ショタ顔に騙されちゃダメ!彼は1カメさんを涼しい顔で潰すのですっ、2カメさんっ、その甘いマスクをズームアップっ!」


プーン。


「……、蚊が」


蚊メラ。
こんな小さな虫がカメラ代わりなのかと目を細めて見れば、頭部分に大きな目玉(レンズ)がついていた。


「えっと、すみません」


潰れた蚊を分福に差し出す。条件反射とは言え、大切な仲間(キャメラ)を潰してしまった罪悪感がある。どうお詫びしたものかと、わたるんは分福の視線に合うように膝を折る。


< 39 / 454 >

この作品をシェア

pagetop