わたるんといっしょ


気持ちは知っていても、その口から言ってほしい。そばにいたい大切な人だからこそ、気持ちでも言葉でも――


「認めてほしかった、ですか」


「大好きな人おるだけで、毎朝の目覚めが清々しくなりますえ」


狐面と似た微笑には笑いを返しておく。意識しなくても自然と緩む頬に。


「みんな大好きです」


隠さなくてもいい本音が口から出る。


「冬月の見舞い行ってあげてぇな。わたるんはんに会えないと禁断症状出るやもしれんし。――わたるはんの怪我はどない?」


「僕は何ともないですよ。阿行さんたちも無事みたいでしたし」


溝出除くとまでは口にしない。


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