わたるんといっしょ
(一)
例えるなら、砂時計。
一人(単体)では、時が流れない。
「好美(よしみ)さん、大丈夫ですか?」
そうやって、人に声をかけられたことで、初めて好美の時は動き出す。
「あ、うん……」
緩慢な動作で平気だと頷いてはみるものの、正直、最近どうかしているんじゃないかと、自分自身に恐れを抱く。
「アルツハイマーって、十代でもなったかな?」
言いながら、自分は今、河川敷の斜面に座っているのかと、知る。
尻の痛みからして、ここに長時間いるのだろう。
――自分のことなのに。
どうして分からないのだと、好美は指先で禿げた地面を擦る。