わたるんといっしょ
「どうでしょう。若年性アルツハイマーなんて、近年、有名にはなりましたが。確かあれも、40代が主だったような……」
「渉くんなら、何でも知っていると思っていた」
「買いかぶりですよ。――最近、物忘れが激しいんですか?」
好美が言わんとすることを楽に受け取った渉は、そう聞き返した。
「まあ、うん……、なんか」
どう説明すれば分からないが、物忘れと言えば物忘れ。
きちんと自分は行動しているはずなのに、『気づいたら』という場面が多々あった。
朝起きて、学校に行く。ただし、『学校に行った』という過程が抜けている。気づいたら、教室の席に座っていた。
家に帰り、二階の部屋へ行く。玄関から廊下、そうして部屋にいる。思い返せば、階段を登った事実が抜けていた。