黄昏バラッド
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それから数日が経って、日が暮れはじめた中央公園。
今日は早めに家を出て、噴水の段差に座りながらサクがなにかを書いている。
「なにしてるの?」
私が覗きこむとそれは白紙の紙。
そこにサクが音譜を書いて、鼻唄を歌いながら作曲しているみたいだ。
「すぐ書かないと忘れちゃうから」
サクはそう言って自分の世界に入ってる。
私は邪魔しちゃ悪いと思って、サクが珍しく持ってきた楽譜を手に取った。
「これ、見てもいい?」
「~♪♪」
サクは集中していて、私の声なんて耳に入ってないようだ。
サクが曲を書いてる姿を初めて見たけど、こんな風に無我夢中で書くんだね。
サクの部屋が楽譜の山になる理由が分かった。
返事は返ってこなかったけど、見られてまずいものは持ってこないよね。私は数枚ある楽譜を手に持ち、それをぼんやり眺めていた。
考えてみれば、こんな風にちゃんとサクの楽譜を見たのは初めてかもしれない。
楽譜だからメロディーは分からないけど、サクが書いた歌詞を見ればどんな曲なのか分かる。