黄昏バラッド


サクはあのあと、曲を書き続けて公園では二曲しか歌わなかった。


「ごめんね。これだったら家で書いてた方がよかったね」

家に着いたサクは書き終わった楽譜を無造作にいつもの場所に置いた。

どんどん積み重なる楽譜の山。せっかくいい曲なんだから、もうちょっとファイルに入れるとかすればいいのに。


「体冷えちゃったでしょ?先にお風呂に入りな」

曲を作ってるサクはなんか別人みたいだったけど、家に帰ってくるといつものサクだ。


私は黒のスウェットを持ってお風呂場に向かった。

これはサクのスウェットだけど、今は私の寝間着になっている。だんだんサクの匂いが薄れてきてるのが残念。


私の入浴時間は大体30分。

待たせたら可哀想だと思って早めに出たらサクがベッドで眠っていた。まあ、今は私が使ってるベッドなんだけど。


「……サク?お風呂あいたよ」

一応声をかけたけど起きる気配はない。


そんなに疲れてたなら先にお風呂に入ればよかったのに。サクは自分の布団も敷く気力もなかったみたいだ。

きっと曲を書いて頭を使ったから疲れたんだろうね。

あれだけ集中するんだから当然だ。
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