黄昏バラッド
「あ?」
中にはやっぱり人がいた。その人は壁のコルクボードの前に立って私を睨んでいる。
……泥棒ではなさそう。って、このキャップにサングラス姿の人はあの人しかいないというか、思い当たらない。
「お前だれ?」
この口調、この失礼な態度はやっぱりイーグルの尚さんだ。
「え……えっと、私ここの従業員で……」
昨日会ったんだけど、この人が覚えてるわけないか。
「ふーん。で?俺になんの用?」
いやいや、用なんてないし。むしろそれはこっちの台詞なんですけど。私はピクピクと顔が引きつるのを必死で我慢していた。
「まだ開店時間じゃないので勝手に入られると困ります」
芸能人だかなんだか知らないけど私には関係ない。それに鉄さんと会ったらまた喧嘩になるだろうし。
「は?俺が誰だか分かって言ってんの?」
尚さんはそう言ってサングラスを外した。その目は完全に怒ってるけど、私は間違ったことは言ってない。
「イーグルの尚さんでしょ?知ってますけどそれがなに……」
私がそれを言い終わる前に、尚さんは乱暴にソファーに座った。
「あーもしかして俺のファン?サインならあげないよ」