黄昏バラッド


……好きになった人の名前?

なんだか不意討ちをくらってしまったけど私は騙されない。


「豆ちゃんは彼氏いんの?」

ま、ま、豆ちゃんって?


「あの、それ私に聞いてます?」

「は?なに言ってんの?豆ちゃん」

ちょっと待って。たしかに振った人たちの中に私の名前はなかったけど、なんでよりにもよって豆?


「あんた豆っぽいじゃん。小さくて」

「………」

尚さんが身長高いからそう見えるだけで、私の身長はいたって平均だよ。

「んで?彼氏いんの?」

結局その話題に戻るんだ。まあ、いいけど。


「いません」

「へえ、かわいそっ」

本当に私はこの人が嫌いだ。興味がないならはじめから聞くなよって感じ。


「尚さんは彼女いるんですか?」

これでいないって言ったら同じことを言ってやる。


「いるよ?いっぱい」

……いっぱいですか。それはよかったですね。


「じゃあ、その彩さんとも付き合ってるんですか?」

興味なかったけど、話の流れでついそんなことを聞いてしまった。でも返事はすぐに返ってこない。

チラッと尚さんを見ると、最初に見ていたコルクボードを見つめていた。


「いや、奪われた」
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