黄昏バラッド
:弱虫な影
暫くして次々とサンセットに従業員たちが出勤してきた。
「あれ?麻耶ちゃん今日は早いね」
「おはよーっす……あれ、麻耶ちゃん?」
……どうしよう。尚さんが来たって言うべきなのかな?べつになにもなかったし、それでまた空気が悪くなるのは嫌だなあ……。
「うーっす。お?今日は途中でいないと思ったらもう来てたんだ」
そのあと、鉄さんがいつものように出勤してきた。鉄さんには言うべきだと思う。一応、店長だし。
「あー、喉渇いた。てめえらはさっさと開店準備しろ」
「えーずるいっすよ。それに店で使う飲み物は勝手に飲まないで下さい」
「うるせー」
いわゆる店長の特権ってやつ。鉄さんはみんなに文句を言われながら店の冷蔵庫を開けた。
「……あれ?ここにあったお茶は?」
ドキッ。たくさんあるからバレないと思ったけど、やっぱり本数ぐらい把握してるよね。そこだけは店長っぽい。
「あ、あの、鉄さん……」
私はそーっと鉄さんに近づいて小声で耳打ちをした。
尚さんが店に来たこと、そして言われるがままお茶を出したことを全部打ち明けた。