黄昏バラッド
「へえ、で?金は?」
鉄さんの反応は普通だったけど、やっぱりなんか怒ってる。
「……は、払って下さいって言いましたけど、そのまま帰っちゃいました」
もしかしてこれは私が悪い雰囲気……なの?だってあの状況じゃどうすることもできなかったというか。
「麻耶ちゃん」
鉄さんは静かな声で私の肩に手を置く。
この微妙な沈黙が逆に怖い。
「……な、なんですか?」
私、怒られる?それともクビとかじゃないよね?
「はい。これ罰として配ってきて」
鉄さんはそう言って分厚い紙を私に差し出した。
「え、これなんですか?」
配ってきてって?ってか罰ってやっぱり私が悪いの?
「うちの宣伝のチラシ。あの野郎にタダでうちの飲み物を出した麻耶ちゃんへの罰」
そのチラシにはサンセットを宣伝する内容と、ライブハウスの情報もしっかりと書かれていた。
「大通りに行けば人がいっぱいいるから。ちゃんとうちの宣伝してこいよ?」
チラシはズシリと重く、私ひとりで配るのは正直ムリな量。
「……これひとりで配るんですか?」
助けを求める目。すると鉄さんは不適切に微笑んだ。
「当たり前だろ」
「………」
やっぱり私に責任があるみたい。文句はあるけど、立場上言えるわけないし。私は渋々チラシを抱えてサンセットを出た。
出る直前にゆっきーさんたちが「暇になったら手伝いに行くよ」って言ってくれたけど……やっぱり納得いかないなあ。