黄昏バラッド

:野良猫の夜



中央公園を出て私たちは暗闇の中を歩いていた。ガードレールの向こう側は長距離トラックに客待ちのタクシー。乱暴な運転をしてる車がクラクションを鳴らしていてうるさかった。

そんな中サクは「星が綺麗だね」とか「星座が見えた」とか私の手を引きながら喋っている。

その間私はずっとうるさい雑音で聞こえないふりをしてた。


これからどこに連れていかれるんだろう。

もしかしたら怖いめに合うかもしれない。でもそうなっても全部自分のせい。はじめから綺麗だけの世の中じゃないって知ってる。


「着いたよ」

サクがそう言って足を止めたのは白いアパートの前。その101号室の鍵を開けるとそっと私の背中を押した。


「入って。少し散らかってるけどね」

「………」

玄関には男物の靴が数足と傘が一本。家の中は知らない匂いがして、きっとこれがサクの匂いだ。

部屋は1DKでどうやらひとり暮らしらしい。

……って当たり前か。ひとり暮らしじゃなかったら今日会ったばかりの私を部屋に連れてきたりしない。
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