黄昏バラッド
嘘つき、嘘つき、嘘つき。
心配なんてしてないくせに。
私はもうあの場所には帰らない。
帰りたくない。
「ねえ、麻耶ってばっ!」
知らん顔をしようと思ったのに無理やりに肩を掴まれてしまった。そこにいたのは同じ高校、同じクラスの友達。
……いや、友達だった人。
「もう、シカトしないでよ!あんた謹慎中に急にいなくなったとか言って学校でも大騒ぎなんだからね!」
「………」
大騒ぎ?大笑いの間違いでしょ?
どうせみんなで私の噂をして、面白くて仕方ないんでしょ?
「まあ、たしかにビックリしたけど逃げちゃうことないじゃん?せっかく退学じゃなくて謹慎で済んだのにさ」
嫌だ、私はもう思い出したくない。
「あのあと、横井先生かなりあんたのことかばってたんだよ?麻耶は悪くない。可哀想だから責めないでくれって」
やめて、違う、やめて。
「先生も結婚するらしいし、あんたがしたことなんてみんなすぐ忘れるって」
「やめっ……」
私が声を出そうとした時、ガシッとだれかに手を引かれた。
「ごめんねー?この子仕事中だから」
それは紛れもない鉄さん。
「これあげるから。あとで店に遊びにきてね」
鉄さんはそう言ってチラシをクラスメイトに渡すと、私を逃がしてくれたかのようにその場から連れ去ってくれた。