黄昏バラッド
Episode:5 リバース
***
それから数日が経ち、私の日常はまた元通りになったはずだったのに、またこの人がサンセットへやって来た。
「だから帰れよ。店の空気が悪くなるだろーが」
開店直前の店内で、すでに鉄さんがピリピリとしている。
「空気悪くしてんのはてめえだろ。ほら、これ決まったからよ」
もちろん、こんなに鉄さんを怒らせるのは尚さんしかいない。尚さんは相変わらずキャップとサングラスをして、なにかをカウンターのテーブルに置いた。
「それ、シークレットライブの日程と時間。音響とか機材はこっちで用意するから」
尚さんが置いた紙にはライブの詳しいことが記されていた。
「は?誰がやっていいって言ったんだよ?それにてめえらの客がうちの店に入りきるわけねーだろうが」
……たしかに。尚さんがいるイーグルはドームでライブするほどの人気バンドだし、ファンの数だってものすごいと思う。
「これだから素人は。シークレットライブだぞ?少人数しか呼ばねーよ」
今さらだけど尚さんってやっぱり偉そうだよね。この店を使いたいならもっと柔らかい言い方で言えばいいのに……。