黄昏バラッド


「なにを言われても俺は承諾しねーからな。そんなにライブがやりたいなら別の場所を探せ」

鉄さんはそう言ってタバコに火をつけた。店内は禁煙だけど開店前だし、今はそんなことを気にしてる場合じゃないって感じ。

それを見た尚さんもタバコをくわえて、ふたりの独特の匂いの煙が店内に充満した。


「鉄、よく考えろよ。うちがここでやれば店の宣伝になるだろ?それに昔ここの常連だった奴らもライブに呼ぶつもりだし」

「………」

昔の常連?鉄さんや尚さんやサクと同じサンセットで夢を見た仲間たち。


「もう音楽をやめちまった奴らも多いけど、たまには昔に戻ってバカみたいに曲を弾くのも悪くねーだろ」

尚さんの言葉に鉄さんはなにも言わなかった。


顔を合わせれば喧嘩ばかりのふたりだけど、サンセットはお互い原点の場所。

鉄さんは最後まで首を縦に振らなかったけど、多分ライブは行われると思う。だって尚さんが置いたライブの日程と時間が書かれた紙を考えるように見つめていたから。


イーグルのシークレットライブは一週間後の日曜日。時間は夕方の6時30分。

サクの好きな黄昏時。
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