黄昏バラッド
私はこの答えを知っている気がする。
サクは普段ぜんぜん男らしくないし、いつもなよなよしていて頼りない。でもそんなサクが誰かを強く抱きしめたり、独り占めしたいって思ったり、柔らかい指先で触れたり。
だれかを好きになって。
だれかの彼氏になって。
だれかを独占して。
そんなサクの姿なんて想像できないけれど。
「……あるよ」
サクは鼻唄を口ずさみながらポツリと答えた。
うん、そうだろうね。わかっていたよ。
「ノラはあるの?」
サクのギターがBGMみたいに聞こえてくる。
それはやっぱり切なくて、ラブソングなんかじゃない。
「……あるよ」
なんか言ってて可笑しくなった。だってサクと私、全く同じ口調で同じ言葉を返したね。
恋ってもっとワクワクして楽しいものだったはずでしょ?この公園にいるカップルみたいにさ。
なのに私たちの返事はまるでもう思い出したくないみたいだったよ。
「……私はもう、恋なんてしないよ」
肌に染みるような冷たい風に乗せて、私はそんな言葉を呟いた。
あんなに傷つくぐらいならもうしない。
ううん、たぶん怖いの。またあのどん底に落ちるような悲しみに出逢うのが。
「……うん、俺も」
私はギターと風の音のせいにして聞こえないふりをした。
サクはそのあと、いつものように歌いはじめたけど、それはやっぱり悲しいメロディーだった。