黄昏バラッド


***


「おい、豆。お茶」

「………」

次の日も尚さんはサンセットにやってきた。

しかも尚さんだけじゃない。画面の向こう側でしか見たことのなかったイーグルの他のメンバーも芸能人オーラを出しながら何故か店にいる。


「おい、やべーよ本物だよ」

「哲郎さんのギター半端ねーんだよな。あとで握手してもらおうかな」

当然同じバンドをしている従業員たちはソワソワとしていて、落ち着かない様子。


「店長さんすいませんね。音響とか機材とか勝手に入れちゃって大丈夫っすか?空調とかアンプの具合とか確めたいんで」

イーグルのスタッフらしき人も店を出たり入ったり慌ただしい。


「おい、俺はまだいいって言ってねーぞ」

鉄さんは腕を組みながら、尚さんを睨みつけている。


「はあ、空気読めよ鉄。あ、そこにコンセントあるから勝手に使っちゃって」

「………」

鉄さんはきっとものすごく言いたいことはあるけど、さすがにイーグルのメンバーがいて、スタッフたちもいるから言えないって感じだ。
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