黄昏バラッド
部屋は散らかってると言ってたけど、ぜんぜん物がなくてあるのはテレビとベッドとテーブルと積みあげられた楽譜。
「適当に座って……って濡れたままだったね。シャワー浴びてきていいよ」
サクは脱衣場を指さして私に白いバスタオルを手渡した。
お人好しでおせっかいなのに、意外にせっかちなんだ。
別にここまで来て逃げたりしないのに。
私はサクに言われた通り、脱衣場に向かい制服を脱いだ。
――私、なにしてるんだろ?
地元を出て、この街に来て、サクに会って、裸になってる。
ザーッとお風呂場に落ちるシャワーの音はまるで嵐の日の大雨みたいで、私はそれを頭から浴びて目を瞑った。
大丈夫、怖くない。
だって初めてじゃないし、なにも考えず無心でいればすぐに終わる。そう自分に言い聞かせながら私は体を綺麗に洗った。
お風呂場の前には男物のスウェットが置いてあって、これを着ろってことなんだと思う。
また裸になるのに?
私はゆっくりと腕を通すとサイズはぶかぶかで、やっぱりスウェットからは知らない匂いがした。