黄昏バラッド
もちろん、こんな状況で店を開店させられるわけもなく、外のドアには【close】の札。
店の中にあったテーブルや椅子はとりあえずスタッフルームへと運び、サンセットが私の知らない雰囲気になっている。
「あの、尚さん……。ライブは一週間後じゃなかったんですか?」
私はお茶を出して、見慣れない機材や作業に戸惑っていた。
「は?ライブはすぐに来て、すぐやれるもんじゃねーんだよ。色々と準備があんの。分かったか、豆」
はいはい、どうせ私はなにも知らない素人ですよ。
他のイーグルのメンバーはみんな優しい人たちっぽいのに、なんで尚さんだけこんなにひねくれてるんだろ。
「ねー音出してみても大丈夫っすか?」
ステージに上がっているイーグルのギターの人が鉄さんに言った。もうこんなに大事(おおごと)になったら、鉄さんもダメとは言えないよね。
「あーいいよ。ドア閉めれば防音になるから」
すると、すぐに大きな音が店内に響いた。
それはまるで地響きみたいに。
……な、なにこれ。
ギターってこんなに大きな音が鳴るの?