黄昏バラッド
――♪♪♪ッ!!
店内に取り付けられた無数のスピーカーからドンッドンッと音が響いてくる。
はじめて聞いたバンドの音はあまりに衝撃的で、サクが奏でる優しいメロディーとはぜんぜん違った。
「音は良さそうだな。跳ね返りはねーけど、まあ店が狭いしこんなもんだろ」
尚さんは私が出したお茶を飲みながら満足そうな顔をしている。
音を聞いた鉄さんや他の従業員たちも自然とバンドマンの顔になっていた。私は音楽のことは分からないけど、プロの人ってやっぱりすごいんだろうな……。
「鉄。分かってると思うけどライブのことはベラベラと喋るんじゃねーぞ」
「俺が喋るかよ。バーカ」
私も他の従業員たちも念を押されるように口止めされた。
ライブに呼ぶのはイーグルの昔からのファンやサンセットの常連客。本当に限られた人しか来れないまさにシークレットライブだ。
「おい、豆。お前は未成年だから来るんじゃねーぞ」
……ってか豆、豆って本当にこの人私のこと豆しか言わないんだけど。恥ずかしいからやめてほしい。
「尚。働くのはダメだけど客として来るなら大丈夫だよ?」
イーグルのボーカルの人が優しくフォローしてくれた。
やっぱり、ひねくれて意地悪なのは尚さんだけらしい。