黄昏バラッド
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シークレットライブ当日。
私が目覚めるともうサクはいなくて仕事に出掛けたようだ。
机にはいつものように置き手紙。
【仕事に行ってきます】のたった一行だけ。
結局サクの口からライブの返事を聞くことはできなかった。もしかしたら何も言わないことが〝返事〟なのかもしれないけど。
イーグルのライブは夕方から。まだまだ時間はあるけどなんだか落ち着かない。
きっとサクは行かないだろう。
そしたら私だって行く理由はないし、今日も普通にご飯を食べて後は寝るだけ。
きっとサクもそう。
仕事を終えてご飯を食べてお風呂に入って、少しギターに触れて布団で眠る。
サクは本当にそれでいいの?
こんなことを思ったってサクが決めたことだから、私には何も言う資格はない。
私はモヤモヤした気持ちを抑えるようにまたベッドに横になった。
サクが帰ってきたら普通に接しよう。
ライブの話はしないで、いつも通りの私たちの日常に戻るだけ。
……これでいいんだよね?
サクはサクとして公園で歌って、曲を作って、
また歌って。
これがサクの選んだ答えなんだよね?