黄昏バラッド



私たちの歩くスピードは遅かった。

それはまるで亀みたいに。

でも確実に一歩、一歩、サンセットに近づいている。


その間、夕焼けの光りが頬に当たって気持ち良かったけど、サクはうつ向いて黙ったまま。


……なにを考えるの?

昔のこと?トワイライトのこと?それとも……。

きっと今でも迷ってるんだろうね。


私だって怖いよ。

サンセットに着いて、ライブの音を聞いて。

サクがどんな顔するのかって考えたらすごく怖い。


でもひとりじゃないから、サクが行くって決めたのなら私は隣で寄り添うだけ。

大丈夫。なにがあっても私がサクを守るから。


いつもの倍以上の時間がかかり、ようやくサンセットの看板が見えてきた。

店の前には人だかりができていて、きっと中に入れなかったイーグルのファン。耳をすますと楽器の音がして、ライブはすでに始まる直前だった。


「中に入る……?」

私がそう言うとサクは首を横に振った。


怖いんだね、手が震えてる。

私はサクの手を引っ張り、店の外にある窓の近くに連れて行った。

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