黄昏バラッド


窓から見える店内は昼間のカフェではなく、完全にライブハウスだった。

薄暗い照明に大人の雰囲気が漂う空気。

ステージにはイーグルのメンバー、そして選ばれた少人数の観客たち。その中には鉄さんや従業員のみんなもいて、もうすぐシークレットライブが開演される。

最初に挨拶したのはイーグルのボーカルの人だった。


「今日は日頃の感謝を込めて歌いたいと思います。俺たちのファン、そしてサンセット常連客。みんな盛り上がって行こうぜーー!!」

尚さんのドラムが鳴り響き、また地響きのような曲が始まった。


――♪♪♪ッッ!

大きな音、大きな声、店が揺れるような歓声。


これがバンド。

ギター、ベース、ドラム。その演奏に乗せて声が合わさる衝撃的な爆音。


すごい、すごい、すごい。

息を忘れるぐらい引き込まれる。

サンセットの店内が全て音楽に包まれている。


サクはこの世界にいたんだね。

稲妻みたいな衝動が起きるこの空間に。


私は隣にいるサクの顔を見た。

それはやっぱりバンドマンの顔になってたけど、手は震えたままだった。

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