黄昏バラッド
:交差する
***
それから数日が経ち、その間サクは一度もギターに触れなかった。「歌いに行かないの?」って聞いても笑って誤魔化されるだけ。
サクはこのまま本当に音楽をやめてしまうのかな?
あの心を打つメロディーはもう聞けないの?
「あー、肩痛てぇ。豆ちゃん揉んで」
イーグルのシークレットライブは大成功に終わり、それからちょくちょく尚さんはサンセットに来るようになった。
「おい、尚。お前なんでライブ終わったのにここに来るんだよ?用がないならさっさと帰れ」
相変わらず鉄さんと尚さんは仲が悪いけど。
「……暇なんじゃないですか?」
私は尚さんに飲み物を出しながらぽつりと呟く。
「あ?なにか言ったか?豆」
イーグルのライブのおかげで客足は伸びたけど、それは夜のライブハウスの方で。
昼間のサンセットにはあまり変化はない。
「俺が暇なわけねーだろ。今日だって昼から取材だし、夕方からは収録だし、夜はレコーディングだっつーの」
尚さんってそれでもここに来るってことは、なんだかんだ言ってサンセットが好きなんだろうな……。