黄昏バラッド


もうやめて。

サクがいない所でサクのことを悪く言わないで。

それに、それに……。


「なんだよ豆。てめえには関係ねーだろ」

尚さんの冷たい言葉に私は唇を噛み締めた。


関係ないよ。関係ないけど。

私はギュッと手に力を入れて尚さんと鉄さんを見た。そして……。


「サクは音楽を捨ててない。ちゃんと自分で歌って音を奏でてるよ」


――ごめんねサク。

でも言わずにはいられなかったの。


だってサクは私に言ったでしょ?

『こんな歳になっても音楽を捨てられないなんて、本当にダメな大人なんだよ』って。


そうやって自分を否定してまで捨てることのできない音楽はサクにとって一番大切なものなんだよね。

それなのにサクのいない場所で〝音楽を捨てた〟なんて何度も何度も言われたら、私だって悔しいよ。


「……麻耶ちゃん。それ本当?」

鉄さんがそう言って私にゆっくりと近づいてくる。


「ねえ、亮がまだ歌ってるって本当なの?」

鉄さんの瞳には熱い想いが込み上げていた。


本当だよ。

サクは今も〝唄う人〟なの。

だからきっとどんなに迷っても、どんなに考えても、音楽を捨てることなんてできない人なんだよ。
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