黄昏バラッド


シーンとしてる部屋の中でサクのシャワーを浴びる音が聞こえてくる。お風呂から出てきたら、きっともうあんな子どもみたいに笑わない。

私はサクのことをなにも知らないし、なにかを期待してるわけじゃない。でもさっき聞いたあの歌声だけは綺麗なままの思い出でいたいとか考えたりして。


――ガラッ。

暫くしてお風呂場のドアが開く音がした。


大丈夫、怖くない。何度も自分に言い聞かせて、ギュッと手を握りしめた。


「あれ?体育座りなんかしてどうしたの?テレビでもつけて横になってたらよかったのに」

サクは濡れている髪を拭きながら明るい声で言った。


「でも今の時間じゃなにも面白いのやってないよね」

薄手のTシャツに黒のスウェットのズボン。濡れ髪のままサクはリモコンを取ろうとしたけど時計を見て再びそれをテーブルの上に置いた。


――ドクン。

面白いテレビがやってないってことは、きっとそういう展開になる。覚悟を決めたはずなのに心臓がうるさく響いていた。


「じゃあ……」

――ドクン、ドクン、ドクン。


「トランプでもする?」
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