黄昏バラッド


――5年。

言葉にすれば長いけど、サクにとっては決して長いものじゃない気がする。

尚さんはため息をつきながら飲み物を一口飲んだ。


「こんなこと言いたくねーけど、この間事務所の社長からトワイライトのことを聞かれたよ」

……事務所の社長?

鉄さんの手が止まり、私も話の続きが気になった。


「お前も知ってると思うけどうちの社長、あの頃のサンセットに出入りしてただろ?新人のバンド探しにさ」

私の知らないサンセットの時代。

夢を追って集まったバンドマンの溜まり場所。


「まあ、そのおかげで俺はイーグルに入れたんだけど」

「………」

「それで社長、この前ここでライブやったら昔を思い出したらしくて。トワイライトは復活しないのかってうるせーんだよ」


トワイライトの復活?

私はゴクリと息を飲んだ。

尚さんの話を聞いた鉄さんはまた作業に戻り、
静かに言い返す。


「……復活もなにも亮なしじゃなにも決められねーよ。それにお前は今イーグルのドラムだろ?」

尚さんは禁煙のはずの店内で煙草に火をつけて、煙は床に吐いた。


「社長は元々トワイライトのファンだ。デビューの話だって今の社長が進めてたことだし」

「………」

「復活すれば俺はイーグルとトワイライトの掛け持ちドラム。そうしろって言われたよ。こんな話聞いたこともねーけどな」
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