黄昏バラッド
待って。
なんか分かんないけど、すごい話になってる。
トワイライトの復活?
事務所の社長?デビュー?
私には世界が違い過ぎて全く頭が追いつかなかった。
「本当に聞いたこともねーな。そんな現実味のない話なんて実現できるわけがねーよ」
鉄さんは軽く尚さんの話を受け流した。それを見た尚さんが呆れた顔でため息をつく。
「俺だってこんな話し信じちゃいねーし実現できるとも思ってねえ。第一おれはトワイライトを抜けた人間だからな」
「………」
「でもチャンスが何回も巡ってくるほど音楽の神様は優しくねーんだよ」
尚さんの顔つきが急に変わった。
これはプロの顔であり、音楽の厳しさを知っている顔。
「鉄。てめえだって夢を諦めてねーんだろ?プロになって音楽で飯を食うっていう夢をよ」
鉄さんの夢。
そうだ、鉄さんだっていまだにベースを弾いてるし、毎日ライブハウスの空間を感じている。
口には出さなくても鉄さんにとって音楽は遊びじゃない。
「毎日音を出したって認められないヤツは認められないし、どんなにいい曲でもすぐに埋もれちまう。そうだろ?」
尚さんは珍しく真剣な顔をしている。
こんな顔、初めて見た。