黄昏バラッド


もう、またその質問?

サクのことは好きだよ。当たり前じゃん。

でもそれは恋愛感情じゃなくて、もっと深くてもっと強い。

この気持ちをなんて説明すればいいか分からないけど、とにかくサクが誰よりも大切だってこと。


「あいつのことが好きならあいつの傍にいてやって」

鉄さんの顔は儚げで、その表情の意味を読み取ることができない。


「たぶん亮、麻耶ちゃんの前でなら泣くと思うんだよね」


言われなくても私はサクの傍にいるよ。そう強く決めたんだから。

でもきっと、鉄さんが言った〝傍にいて〟は私が思ってるものより遥かに重い。私が決めたサクの傍にいることなんて、ちっぽけに思えるぐらい。

私だってサクの隣にいたいし、できることなら胸に詰まる想いも受け止めてあげたい。


だけど、今の私ではムリ。

だって自分の逃げてきたことも解決できていないのに、偉そうにサクの話を聞いて背中を押すことなんてできない。

サクのことを全て知りたいなら、私も全て話さなきゃ。


サクに前に進んでって言うなら、私も前に進まなきゃ。

サクに変わって欲しいと願うなら、私も変わる。

もう中途半端な気持ちのままじゃ嫌。


〝逃げても逃げても逃げられねーなら受け入れろ〟


うん、私ももう逃げたくない。

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